01】 日本の労働基準法に相当するような香港の法律は何ですか?

「香港に赴任してきたばかりで、まだ香港のことがまったくわかりません。ところで、香港では、日本の労働基準法に相当するような法律がありますか?」

 

日本の労働基準法に相当する香港の法令は、1968年に制定された雇用条例(Employment Ordinance)57章です。

雇用条例は、労働者の賃金保護を主目的とし、労働者の労働条件に関する最低基準を明文化したものです。雇用契約、年末手当、母性保護、休息日、賃金の支払い、解雇補償金・長期服務金、傷病手当、有給休日、年次有給休暇などの規定を含む、計14節から成り立っています。

雇用条例は香港で雇用契約に基づき雇用される全ての労働者およびその使用者に適用されます。使用者としてはこの雇用条例はもちろんのこと、他の法令(差別条例や最低賃金条例など)を十分に理解し、日々のマネジメントに反映させることが肝要です。

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02】 香港で会社を設立します。雇用契約はどのようにしたらよいですか?

「香港で会社を設立することになりました。それで人も雇っていかなければなりませんが、社員との雇用契約はどのようにしたらよいですか?」

 

香港では雇用契約は書面である必要はありませんが、書面にて雇用契約をきっちりと締結されることをおすすめします。

書面による雇用契約の締結は、企業によって、就業規則(全従業員に適用)と雇用契約書(当該従業員のみに適用)双方で締結する場合もあれば、雇用契約書のみで締結する場合もあります。

また、雇用契約書に明記する事項としては、少なくとも、雇用開始日、賃金(基本給・手当など)および賃金の算定期間、ポジション、試用期間の長さ、休日・休暇およびそれらの算定期間、雇用契約の解除方法および予告期間、守秘義務や競業避止、またダブルペイがある場合はその支払額または支払割合および算定期間などが挙げられます。

(*) 弊社では、会員企業向けに、雇用契約書・就業規則の作成やチェックをさせていただいております。これまでにも、香港で360社を超える作成のお手伝いをしてまいりました。雇用契約書や就業規則、その他規程の作成やチェックについては、弊社までお気軽にご相談ください。

 

 

03】 香港での最低賃金はいくらですか?

「このたび香港で会社を設立し、人を雇用していくに際し、給与を決めていかなければなりません。そもそも、香港では最低賃金はいくらですか?」

 

法定最低賃金は1時間あたり37.5香港ドル(20195月現在)です。

香港では、最低賃金条例が施行されたのが2011年5月1日です。それまでは、法定最低賃金は存在しませんでした。また、最低賃金は時給で決められていますが、月給の社員にも適用されます。月給の社員の給与が、法定最低賃金の水準を満たしているかを比較する際には、雇用条件により算定方法が異なりますのでご注意ください。

なお、今後、香港政府は法定最低賃金の水準を見直していきますので、最新情報にご注意ください。


(*) 弊社では、最低賃金に関しては、会員企業向けに、下記のようなコンサルテーションや情報提供を行ってきました。
・最低賃金の講座開催(日本語・広東語)
・最低賃金に関するアンケート調査
・最低賃金に関連する雇用契約書や就業規則の規定の改定
・対策に関する個別コンサルテーション
・最低賃金の最新情報のご提供、など

 

 

04】 『ダブルペイ』は支給しなければいけませんか?

「香港で『ダブルペイ』を払わなければならないと聞いたのですが、『ダブルペイ』は必ず支給しなければならないものですか?」

 

香港の雇用条例(日本の労働基準法に相当)では、使用者は従業員に必ず『ダブルペイ』を支給しなければならないとは規定していません。ただし、使用者がダブルペイの制度を採用し従業員に支給を約束すると、約定した金額を雇用条例に基づき支給する必要があります。

ダブルペイ[正式名称:年末手当(End of Year Payment)]とは、雇用条例第ⅡA節で、「呼称の如何を問わず、契約上の賞与をいう」と定義されています。

 

ダブルペイ制度を採用する場合は、次の項目を雇用契約書あるいは就業規則で決めておくことが肝要です。
・ダブルペイの支給対象となる算定期間
・支給金額
・支給日
ダブルペイの支給を約定しているにもかかわらず、これらを決めていない場合、雇用条例上の規定が適用されますのでご注意ください。

 

なお、契約上の賞与であるダブルペイとは異なり、「会社裁量ボーナス(査定賞与)」とは、企業の業績、従業員本人の勤務成績・勤務態度・会社への貢献度および将来への期待などに対して、使用者が自由裁量により支給するものです。支給するか否か、また支給金額などは使用者によって保証されません。

 

 

05】 年次有給休暇は何日を付与しなければなりませんか?

「雇用条例(日本の労働基準法に相当)で規定されている法律最低限の年次有給休暇権利日数は、1年目に7日、2年目に7日、3年目に8日、4年目に9日、5年目に10日、6年目に11日、7年目に12日、8年目に13日、9年目以降に14日となっています。」

 

雇用条例では、年次有給休暇権利日数として1年目7日を規定しています。

ただし、休暇権利日数の発生と消化(取得)可能となるタイミングが1年ずれています。雇用条例では、次のように規定されています。
「使用者により付与され、関連する休暇年度の満了直後に始まる12ヵ月の期間内に労働者によって取得されるものとする」
つまり、香港の年次有給休暇は、丸1年(12ヵ月)在籍することで休暇を取得することができます。

また、休暇年度を個別管理(各個人の入社日を起算日として1年を管理)とするか、斉一管理(特定の日を従業員全体の起算日として1年を管理)とするかによって年次有給休暇の付与の仕方が変わりますので、ご注意ください。

なお、人材採用などの観点から、初年度の権利日数として法律以上を付与する企業も増えてきています。


(*) 弊社では、年次有給休暇の付与日数を含めた福利厚生(賃金以外の労働条件)の調査を実施し、『日系企業 福利厚生データブック』としてまとめ、会員企業に情報提供しています。

 

 

06】 傷病休暇は付与しなければなりませんか?

「私傷病により休業していた従業員が、医師の傷病休暇証明書を持ってきて、休暇を申請してきました。会社として傷病休暇を付与しなければなりませんか?」

 

休業の日数や貴社の雇用条件などによってきます。雇用条例上では「傷病 手当」(Sickness Allowance)が規定されており、その条件に合えば、傷病日として休業した期間については「傷病手当」を支給します。

雇用条例で規定されている「傷病手当」のポイントは以下の通りです。
1) 適用条件
私傷病により連続して4日以上休業することを、登録医・登録中医・登録歯科 医が発行する傷病休暇証明書により証明された場合に適用。
2) 権利日数
入社初年度は丸1ヵ月の勤務につき2日、入社2年目以降は丸1ヵ月の勤務につき4日の傷病日の権利日数が生じ、最高120日まで累積可能。
3)休業中の賃金
傷病日を取得し休業した日に対し法定平均日給の5分の4を支給。

また、上記とは別に、法定権利を上回る福利厚生の制度として、会社裁量の「傷病休暇」を規定し、運用している企業もあります。


(*) 弊社では、会社裁量の傷病休暇の付与日数を含めた福利厚生(賃金以外の労働条件)の調査を実施し、『日系企業 福利厚生データブック』としてまとめ、会員企業に情報提供しています。

 

07】 香港では台風の時は従業員を出勤させないと聞いたのですが?

「香港では台風の時は従業員を出勤させないと聞いたのですが、法律ではどのように決められているのでしょうか?」

 

悪天候時の出退勤にまつわる法律上の規定はありません。一方で、労工処(日本の労働基準監督署に相当)が作成・配布している台風・豪雨の警報発令時の対応に関するガイドラインにおいて、出社免除などについて記載されています。

労工処が作成・配布している台風・豪雨の警報発令時の対応に関するガイドラインは、法的な強制力はありませんが、一般的には本ガイドラインに沿った規 定および運用を行っている企業が多いといえます。

 

<労工処ガイドライン:台風8号以上・黒色豪雨警報発令時>
・始業時刻前に警報予告あるいは警報が発令されたら出社義務は免除
・終業時刻3時間前以上に解除あるいは警報レベルが下がったら2時間以内に出社
・就業時間中に
 (1) 台風シグナル8号の警報予告が発令されたら:段階的に帰宅させる
 (2) 台風シグナル8号以上の警報が発令されたら:帰宅させる
 (3) 豪雨警報が発令されたら:就業場所あるいは安全な場所で待機させる
・就業を免除した期間の賃金については控除しない


(*) 弊社では、台風・豪雨時の出退勤の扱いに関するニューズレターを会員企業に配信しています。